オープンソースの力を活用する方法～Ubuntuの世界へようこそ～

Ubuntuでgit cloneを使いこなす！基本からエラー対策・便利なオプションまで徹底解説

開発環境構築
目次

1. はじめに

近年、ソフトウェア開発や研究、個人プロジェクトにおいて「Git」は欠かせないツールとなっています。特に、バージョン管理システムとして世界中で利用されているGitは、チーム開発やオープンソースプロジェクトでのコード共有・管理に大きな役割を果たしています。

本記事では、Ubuntuという人気のLinuxディストリビューション上で、Gitリポジトリを「git clone」コマンドを使って複製（クローン）する方法について、初心者にも分かりやすく解説します。
「git clone」は、リモートリポジトリ（例えばGitHubやGitLabに公開されているプロジェクト）を自分のローカル環境にまるごとコピーする際に使う最も基本的なコマンドです。

Ubuntuユーザーが「git clone」を使いこなせるようになることで、様々なオープンソースソフトウェアの導入や、自身の開発環境構築がスムーズに行えるようになります。
また、チームやコミュニティへの参加も一層活発になるでしょう。

この記事では、Gitのインストールから基本的な「git clone」の使い方、よくあるエラーへの対処方法までを網羅的に紹介していきます。
Ubuntuで初めてGitに触れる方はもちろん、すでに使ったことがあるけれど知識を整理したい方にも役立つ内容となっています。

2. 前提条件と環境設定

Ubuntuで「git clone」を利用するためには、まずGit本体がインストールされている必要があります。また、リモートリポジトリにアクセスするための初期設定や、認証の準備も大切です。この章では、環境構築の手順を一つずつ解説します。

2.1 Gitのインストール方法

Ubuntuでは、公式リポジトリから簡単にGitをインストールできます。ターミナルを開き、以下のコマンドを順番に実行してください。

sudo apt update
sudo apt install git

インストールが完了したら、Gitが正しく導入されたかどうかを確認するため、以下のコマンドでバージョン情報を表示させましょう。

git --version

バージョン情報が表示されれば、インストールは成功です。

2.2 ユーザー名とメールアドレスの設定

Gitは、ファイルの変更履歴を記録する際に「誰が、いつ、何をしたか」を保存します。そのため、初めてGitを利用する場合はユーザー名とメールアドレスを設定しておきましょう。

git config --global user.name "あなたの名前"
git config --global user.email "your.email@example.com"

この設定は一度行えば、以降すべてのGit操作に適用されます。もしプロジェクトごとに別の設定をしたい場合は、--globalを省略してプロジェクトディレクトリ内でコマンドを実行してください。

2.3 認証方式の選択と準備

Gitでリモートリポジトリにアクセスする際、認証方式には主に「HTTPS」と「SSH」の2種類があります。

  • HTTPS
    ブラウザと同じようにURLを指定してアクセスします。GitHubやGitLabでは、最近パスワード認証が廃止され、「Personal Access Token（PAT）」の利用が推奨されています。
  • SSH
    公開鍵と秘密鍵を使って認証します。セキュリティが高く、一度設定しておくと都度パスワードを入力せずに済むので、頻繁にGitを使う方にはおすすめです。

2.4 Git Credential Manager（GCM）の利用（必要に応じて）

パスワードやアクセストークンの管理をより安全・便利にしたい場合、Git Credential Manager（GCM）の導入も検討しましょう。
GCMを導入することで、トークンや認証情報を安全に保存でき、毎回入力する手間が省けます。Ubuntuでは公式ドキュメントやパッケージ経由でインストール可能です。

以上で、Ubuntu環境で「git clone」を利用するための事前準備は完了です。
次の章では、実際に「git clone」コマンドを使ってリポジトリを複製する基本的な手順を紹介します。

3. git cloneの基本的な使い方

「git clone」コマンドは、リモートリポジトリの内容を自分のローカル環境に丸ごと複製（コピー）するための基本的なコマンドです。オープンソースプロジェクトやチーム開発で他の人の作成したリポジトリを利用したいとき、まず最初に行う操作が「git clone」になります。

3.1 基本的なコマンド構文

最もシンプルな使い方は以下の通りです。

git clone <リポジトリのURL>

たとえば、GitHubにある公開リポジトリをクローンする場合：

git clone https://github.com/exampleuser/sample-project.git

このコマンドを実行すると、現在のディレクトリ内に「sample-project」という新しいフォルダが作成され、その中にリポジトリの内容が全てダウンロードされます。

3.2 HTTPSを使ったクローン方法

多くのサービスで利用されているのがHTTPS経由のクローンです。URLは「https://」で始まります。初回のみ認証情報（ユーザー名、Personal Access Tokenなど）の入力が求められる場合があります。

git clone https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名.git

3.3 SSHを使ったクローン方法

SSHキーを登録している場合は、より安全かつパスワード不要でクローンできます。SSH用のURLは「git@github.com:」のような形式になります。

git clone git@github.com:ユーザー名/リポジトリ名.git

SSHクローンを利用するには、あらかじめ公開鍵をGitHubやGitLabなどに登録しておく必要があります。

3.4 クローン後のリポジトリ構造

「git clone」コマンドを実行すると、指定したリポジトリの全てのファイルとディレクトリに加え、バージョン管理情報が格納された「.git」ディレクトリも一緒に複製されます。

  • .gitディレクトリ
    ここにはリポジトリの履歴や設定情報が保存されています。このディレクトリがあることで、そのフォルダ内のファイルは全てGitによる管理下に置かれます。
  • 作業ディレクトリ
    プロジェクトのソースコードやドキュメントなど、普段操作するファイル群です。

3.5 クローン時のカレントディレクトリに注意

「git clone」コマンドは、実行したディレクトリ内に新しいフォルダを作成します。あらかじめ保存場所となるディレクトリを移動（cdコマンドなどで）してから実行するのがおすすめです。

4. 特定のブランチをクローンする方法

Gitリポジトリには複数のブランチが存在する場合があります。通常の「git clone」では、デフォルト（mainやmasterなど）のブランチがクローンされますが、特定のブランチだけをクローンしたいケースも少なくありません。この章では、目的のブランチを指定してクローンする方法を紹介します。

4.1 –branchオプションの利用

「git clone」コマンドには--branch（または短縮形-b）オプションが用意されています。このオプションを使うと、指定したブランチでリポジトリをクローンできます。

git clone --branch ブランチ名 リポジトリのURL

例えば、「develop」ブランチをクローンしたい場合は次のように入力します。

git clone --branch develop https://github.com/exampleuser/sample-project.git

これにより、「develop」ブランチがチェックアウトされた状態でローカルリポジトリが作成されます。

4.2 –single-branchオプションと組み合わせる場合

標準では、git cloneは全てのブランチ情報をダウンロードします。しかし、「–single-branch」オプションを併用することで、指定したブランチのみを取得し、ディスク容量や通信量を抑えることができます。

git clone --branch ブランチ名 --single-branch リポジトリのURL

この方法は、特定の機能ブランチだけをチェックしたい場合や、大規模リポジトリを扱う際に便利です。

4.3 クローン後に他のブランチを取得する場合

もし特定のブランチだけでなく、他のブランチも後から使いたくなった場合は、リポジトリ内で次のコマンドを実行してください。

git fetch --all

その後、任意のブランチに切り替えるには、

git checkout ブランチ名

と入力します。

4.4 注意点

  • プライベートリポジトリや権限が制限されているリポジトリの場合は、認証情報が必要になるので注意しましょう。
  • 存在しないブランチ名を指定するとエラーになります。事前にリモートリポジトリでブランチ名を確認しておくのがおすすめです。

特定のブランチだけをクローンしたい場合でも、「git clone」の柔軟なオプションを活用することで、効率的に作業を進められます。

5. よくあるエラーとその対処法

「git clone」を使う際には、認証や接続、権限などさまざまな理由でエラーが発生することがあります。ここでは、Ubuntuユーザーが直面しやすい代表的なエラーと、それぞれの解決方法を紹介します。

5.1 HTTPS認証エラーとPersonal Access Token（PAT）の利用

近年、GitHubやGitLabではセキュリティ強化のため、従来のパスワード認証が廃止され、Personal Access Token（PAT）の利用が必須となっています。
クローン時に次のようなエラーが出ることがあります。

remote: Support for password authentication was removed...
fatal: Authentication failed for 'https://github.com/...'

この場合は、GitHubでPATを発行し、ユーザー名の代わりにGitHubアカウント、パスワードの代わりにPATを入力してください。PATの作成方法はGitHubの「Settings」>「Developer settings」>「Personal access tokens」から行えます。

5.2 SSH認証エラーと公開鍵の登録

SSH経由でクローンする際、「Permission denied (publickey)」というエラーが発生することがあります。これは、SSHキーが正しく登録されていない場合に起こります。

【対処方法】

  1. ターミナルでSSHキーを生成（既存のものがなければ）
   ssh-keygen -t ed25519 -C "your.email@example.com"
  1. 公開鍵の内容をコピー
   cat ~/.ssh/id_ed25519.pub
  1. GitHubやGitLabの設定画面で公開鍵を追加

これでSSH認証のエラーは解消されます。

5.3 リポジトリアクセス権限エラー

プライベートリポジトリや組織のリポジトリをクローンしようとしたときに、次のようなエラーが出ることがあります。

fatal: repository 'https://github.com/ユーザー名/リポジトリ名.git/' not found

【対処方法】

  • リポジトリのURLが間違っていないか確認する
  • アカウントがリポジトリにアクセスする権限を持っているかをチェックする
  • 認証情報を再入力する

5.4 ネットワーク関連のエラー

「Connection timed out」「Could not resolve host」などのネットワーク系エラーは、インターネット接続やプロキシ設定が影響していることが多いです。

【対処方法】

  • インターネットに正しく接続されているか確認
  • VPNやプロキシの利用時は、設定を見直す
  • 一時的なGitHub側の障害であれば、しばらく待って再試行する

5.5 その他の一般的なエラー

  • ディレクトリが既に存在している
    すでに同名のフォルダがあると、クローンできません。ディレクトリ名を変更するか、既存のフォルダを削除してください。
  • ディスク容量不足
    十分な空き容量があるか確認しましょう。

このように、エラーが発生した場合でも、一つ一つ原因を切り分けて対処すれば必ず解決できます。

6. git cloneの便利なオプション

「git clone」コマンドには、さまざまなオプションが用意されています。これらを活用することで、必要なデータだけを効率的に取得したり、サブモジュール付きのリポジトリを正しくクローンしたりと、作業の幅が広がります。ここでは、特によく使われる便利なオプションを紹介します。

6.1 –depthオプション（浅いクローン）

リポジトリ全体の履歴を取得せず、最新の履歴だけを取得したい場合には「–depth」オプションが便利です。
これを使うと、指定したコミット数分だけ履歴を取得できます。

git clone --depth 1 https://github.com/exampleuser/sample-project.git

この例では、最新のコミット1件分だけを取得します。大規模リポジトリやCI環境でスピード重視の場合におすすめです。

6.2 –single-branchオプション

デフォルトでは、git cloneは全てのブランチ情報を取得しますが、「–single-branch」オプションを使うことで、特定のブランチのみをクローンすることができます。
特に「–branch」オプションと組み合わせて使われることが多いです。

git clone --branch develop --single-branch https://github.com/exampleuser/sample-project.git

必要なブランチだけを効率よくクローンしたいときに役立ちます。

6.3 –recursiveオプション（サブモジュールの同時取得）

Gitリポジトリには、他のリポジトリを「サブモジュール」として組み込むことができます。サブモジュール付きのプロジェクトをクローンする際には、「–recursive」オプションを使いましょう。

git clone --recursive https://github.com/exampleuser/sample-project.git

これにより、メインリポジトリと同時にサブモジュールも自動的にクローンされます。もし「–recursive」を忘れてクローンしてしまった場合は、後から下記コマンドでサブモジュールを取得できます。

git submodule update --init --recursive

 

6.4 その他の便利なオプション

  • –origin オプション
    リモート名をデフォルト（origin）以外にしたい場合に利用します。
  • ディレクトリ名指定
    クローン時に保存先のディレクトリ名を明示的に指定したい場合は、コマンドの最後にディレクトリ名を追加します。
  git clone https://github.com/exampleuser/sample-project.git 任意のディレクトリ名

これらのオプションを組み合わせて使うことで、「git clone」をさらに効率的かつ柔軟に活用できます。

7. GUIツールを使用したgit clone

コマンドラインでの操作が苦手な方や、より直感的にGitを使いたい場合には、GUI（グラフィカルユーザーインターフェース）ツールの活用がおすすめです。Ubuntuでは、いくつかのGUIツールを利用して「git clone」を簡単に実行することができます。

7.1 主なGUIツールの例

  • Gittyup
    軽量でシンプルなGitクライアント。Ubuntu公式リポジトリやFlatpak経由でインストール可能です。
  • Visual Studio Code（VS Code）
    多くの開発者に人気のエディタで、拡張機能を使うことでGit操作を直感的に行えます。
  • GitKraken
    視覚的に分かりやすい操作画面と豊富な機能が特徴です（個人利用の範囲で無料）。

7.2 Gittyupを使ったクローン方法

  1. Gittyupをインストールします（例：sudo apt install gittyup または Flatpakからインストール）。
  2. アプリを起動し、「リポジトリをクローン」や「Clone Repository」などのボタンをクリックします。
  3. クローンしたいリポジトリのURLを入力し、保存先フォルダを選択して実行すれば、簡単にリポジトリがダウンロードされます。

7.3 Visual Studio Codeを使ったクローン方法

  1. VS Codeを起動し、左側の「ソース管理」アイコンをクリックします。
  2. 上部に表示される「リポジトリをクローンする」ボタン（または「Clone Repository」）を選択します。
  3. リポジトリのURLを貼り付けてEnterキーを押し、保存先を指定すればクローンが開始されます。
  4. クローン完了後は、VS Code内でそのままコード編集やコミット、プッシュなど一連のGit操作が可能です。

7.4 GUIツールの利点と注意点

  • 利点
    コマンド入力が不要で、視覚的に操作できるため初心者でも扱いやすい。ファイルの差分や履歴も一目で把握できます。
  • 注意点
    ツールごとに機能やインターフェースが異なるため、自分の用途や好みに合ったものを選びましょう。最初はGUIから入り、徐々にコマンドラインにも慣れていくと、より柔軟な運用が可能になります。

GUIツールを活用すれば、Ubuntu環境でも「git clone」やその他のGit操作がより手軽に行えます。コマンドラインと組み合わせて、状況に応じた使い分けができるようになると、作業効率も大きく向上します。

8. まとめ

この記事では、Ubuntu環境で「git clone」を使いこなすための基礎から応用までを詳しく解説しました。
Gitのインストール手順から、HTTPS/SSHを利用したクローンの方法、特定のブランチや便利なオプションの使い方、さらにはGUIツールによる操作方法まで、一通りの流れを体系的にご紹介しました。

「git clone」は、オープンソースプロジェクトの導入やチーム開発、自己学習の場面など、さまざまなシーンで非常に役立つコマンドです。一度しっかり使い方を身につけておけば、今後多くの場面でスムーズに作業を進められるようになるでしょう。

特に初心者の方は、「分からないことがあったらエラー文や公式ドキュメントをそのまま検索する」「慣れてきたら便利なオプションやGUIツールも活用してみる」といったステップで、着実にスキルアップを目指してください。

もし本記事で解決できない疑問や、新たな問題が出てきた場合は、FAQやGitHubの公式ドキュメント、コミュニティの情報も活用しましょう。
今後もUbuntuとGitの組み合わせを活かして、開発や学習の幅をさらに広げていってください。

9. FAQ（よくある質問とその回答）

Q1: UbuntuでGitをインストールするにはどうすればよいですか？
A1: ターミナルで次のコマンドを順番に実行してください。

sudo apt update
sudo apt install git

インストール後、git --versionでバージョンを確認できます。

Q2: git cloneで特定のブランチだけを取得したい場合はどうすればいいですか？
A2: --branch（または-b）オプションを使い、ブランチ名を指定してクローンします。
例：

git clone --branch ブランチ名 リポジトリのURL

必要に応じて--single-branchも併用すると、そのブランチだけを取得できます。

Q3: HTTPS経由でクローンするときに認証エラーが出ます。どうしたらいいですか？
A3: GitHubやGitLabでは、パスワード認証の代わりにPersonal Access Token（PAT）が必要です。GitHubの設定画面からPATを発行し、パスワード入力欄にトークンを貼り付けてください。

Q4: SSHキーの作成方法と登録手順を教えてください。
A4: ターミナルで次のコマンドを実行してSSHキーを生成します。

ssh-keygen -t ed25519 -C "your.email@example.com"

生成した公開鍵（~/.ssh/id_ed25519.pub）の内容をGitHubやGitLabのアカウント設定画面に登録してください。

Q5: クローンしたリポジトリのリモートURLを確認するには？
A5: クローンしたリポジトリのディレクトリで、次のコマンドを実行します。

git remote -v

これでリモートリポジトリのURLが一覧表示されます。

Q6: 既に同じ名前のディレクトリがある場合はどうなりますか？
A6: git cloneは、指定した保存先のディレクトリ名がすでに存在するとエラーになります。別のディレクトリ名を指定するか、不要な場合は既存のディレクトリを削除してから再度実行してください。

Q7: サブモジュール付きリポジトリを正しくクローンする方法は？
A7: クローン時に--recursiveオプションを付けてください。

git clone --recursive リポジトリのURL

すでにクローン済みの場合は、

git submodule update --init --recursive

を実行します。

Q8: Ubuntuで使えるおすすめのGit GUIツールは？
A8: GittyupやVisual Studio Code（拡張機能でGit連携）、GitKrakenなどが人気です。用途や好みに合わせて選んでください。

Q9: cloneした後、他のブランチに切り替えたい場合は？
A9:

git fetch --all
git checkout ブランチ名

で他のブランチへ切り替えることができます。